ゼロからAIモデルを構築するのは、決して簡単な作業ではありません。AIの専門家であれば、分類・物体検出・異常検知といったプロセスがいかに複雑で時間がかかるか、すでにご存じでしょう。そしてAI初心者にとっては、学習のハードルはさらに高くなります。
「Brain Builder for AITRIOS」は、これまで複雑で多くのリソースを必要としていた開発プロセスを、誰もが利用できる形へと変革します。
個人開発者、小規模なエンジニアリングチーム、中小企業でも、従来のアプローチで直面していた課題や苦労なしに、AIビジョンプロジェクトの構築・テスト・展開がスピーディかつ簡単に行えるようになります。もはや膨大なデータセットを収集し、繰り返しトレーニングや調整・テストを重ねる日々は終わりました。「Brain Builder」は、これらの技術的な課題を自動で処理してくれます。インターフェースはシンプルかつ直感的で、ダッシュボードはまるで写真管理アプリのようなユーザーフレンドリーなデザインです。
従来のAI開発ワークフローでは、データセットの作成や高度な専門知識、多大なカスタマイズの時間が求められますが、「Brain Builder for AITRIOS」は、そうした課題を解決し、異常検知のような高度なモデルでさえも、わずか50枚程度の画像で効果的にトレーニングすることを可能にします。
私たちの現場での経験に基づけば、「Brain Builder for AITRIOS」を使うことでAIモデル構築にかかる時間を大幅に短縮できます。従来のAI開発では、熟練者でも1週間、新人であれば1ヶ月以上かかっていたプロジェクトも、「Brain Builder」であれば、経験者なら数時間、初心者でも1日以内でアイデアからモデルの展開まで完了できます。
さあ、両者のアプローチを比較してみましょう。従来のAIワークフローと「Brain Builder」のワークフローを並べて見ることで、どれほどの時間と専門知識を節約できるのかが、明確に見えてきます。
従来のAIワークフロー:ゼロからモデルを構築するために必要なこと
AIモデルを手動で構築する場合、以下のステップを踏む必要があります:
- タスクの定義(分類・物体検出・異常検知)
まず最初に、どのタイプのAIモデルを作るのかを決めなければなりません。
・分類(Classification):画像をあらかじめ定義されたラベルに分類する。
・物体検出(Object Detection):画像内の物体を識別し、その位置を特定する。
・異常検知(Anomaly Detection):画像の中から異常(例外)を検出する。品質管理などでよく使われます。 - データセットの準備
・数千枚の画像を既存のデータセットから取得するか、自分で収集する必要があります。
・収集後、それぞれの画像にアノテーション(ラベル付け)を行います。
※この作業はデータ量によっては数日〜数週間かかることもあります。
・アノテーションツールは高価なものもあり、正確なラベル付けには専門知識が必要です。 - AIモデルの設定
・精度、処理速度、モデルサイズのバランスを考慮して、適切なモデルバージョンを選ぶ必要があります。
・また、使用するツールごとに異なるラベルフォーマットに合わせてデータセットを準備する必要があります。 - AIモデルのトレーニング
・トレーニングには高性能な計算環境が必要です(GPU搭載ワークステーションやクラウドサーバーなど)。
・トレーニングパラメータの設定も必要です。
例:
- 学習率(Learning rate)
- バッチサイズ(Batch size)
- エポック数(Epochs)
- データ拡張(Augmentation)の設定
・最適な精度を得るために、複数回のトレーニングサイクルを繰り返す必要があります。
・トレーニング中は損失関数のカーブを監視し、オーバーフィッティング(過学習)やアンダーフィッティング(学習不足)を防ぎます。 - モデルの変換と最適化
・トレーニングが完了すると、通常は浮動小数点モデル(FPモデル)が出力されますが、これはIMX500などのエッジデバイスには大きすぎる場合があります。
・モデルを対応形式に手動で変換し、ファイルサイズと精度のバランスを取らなければなりません。
・もし最初からIMX500向けに最適化されていなければ、最悪の場合、最初からやり直す必要があり、プロジェクトに大きな遅れが出ます。 - デプロイとテスト
・最後に、構築したモデルをRaspberry Pi AIカメラや組み込みシステムなどのハードウェアにデプロイします。
・もし十分な性能が得られなければ、モデルの再調整(ファインチューニング)が必要となり、ステップ3からやり直しになる可能性があります。
これにはどれくらいの時間がかかるのか?
・AIの専門家であれば、すべての工程を約1週間で完了することができます。
・中程度のAI経験を持つ初心者の場合、最低限動作するモデルを作るのに3〜4週間かかることもあります。
※あくまで目安であり、ケースによって異なる場合があります。
Brain Builderのワークフロー:手間のかからないAI開発
では、「Brain Builder for AITRIOS」がどのようにこの一連のプロセスを簡素化しているのかを見てみましょう:
- タスクの定義
・分類・物体検出・異常検知のいずれかを選択するだけでOKです。
・Brain Builderは選んだタスクに応じた最適な事前構成モデルを自動で使うため、面倒なモデル選定作業なしにスムーズに使い始められます。 - データセットの準備
a)データのアップロード
わずか50〜100枚の画像からでも実用的なモデルのトレーニングが可能です。これにより、これまでコストや手間の問題で難しかったユースケースにも対応可能になります。また、アイデアの早期検証と、必要に応じたスケーリングも簡単です。
・画像をそのままBrain Builderにアップロードするだけ
・データセットの分割(トレーニング/テスト/バリデーション)は自動で実施
・クラウドへのアップロードは不要。ローカルPC上で完結します
・データセットに対する評価スコアが表示され、改善のためのアドバイスも得られます
b)データのアノテーション(必要な場合)
アノテーション作業も最小限の手間で効率的に行えます。
・Brain Builder内蔵のアノテーションツールを利用可能。外部ツールは不要です
・バウンディングボックスや分類タグで簡単にラベリング
・異常検知の場合は、「正常」画像に加えて少数の異常画像をアップロードするだけでOK - AIモデルのトレーニング(自動)
ラベリング済みの画像を使って、プリセットを選ぶだけでトレーニングがスタート。後はBrain Builderが自動で処理し、精度や信頼度の指標を確認して調整を行えます。
・学習率・バッチサイズ・エポック数などの手動設定は一切不要。自動で最適化されます
・オーバーフィッティングやアンダーフィッティングの心配もなし。自動で評価・改善提案されます
・「Quick(高速)」「Balanced(バランス重視)」「Thorough(精密)」の中から処理時間を選べます。時間をかけるほど、データセットに最適化されたモデルになります - デプロイとテスト(IMX500やRaspberry Pi AIカメラへ)
トレーニングと同様に、デプロイもシームレスです。モデルが完成したら「エクスポート」をクリックするだけ。Sonyのインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」に最適化された形でパッケージ化され、追加のコードや複雑な設定は不要です。
・トレーニングが完了すると、すぐに使えるデプロイ用モデルが提供されます
・そのままダウンロードして、Raspberry Pi AIカメラやIMX500に簡単に転送可能。変換処理などは必要ありません
これにはどれくらいの時間がかかるのか?
・初心者でも、1日以内にすべてのプロセスを完了できます。
・経験豊富なAIエンジニアであれば、数時間で完了可能です。
※あくまで目安であり、ケースによって異なる場合があります。
なぜ「Brain Builder」を選ぶのか?
機能項目 | 従来のAIワークフロー | Brain Builder for AITRIOS |
---|---|---|
モデルの選定 | モデルを調査し選定する必要がある | 単一モデル構成のシンプルなワークフロー |
データセットの収集 | 画像の収集とフォーマット調整が必要 | 画像をアップロードするだけでOK。残りはBrain Builderが処理 |
データのアノテーション | 外部ツールが必要 | 内蔵アノテーションツールを利用可能 |
モデルのトレーニング | 高性能なハードウェアと高度なAI知識が必要 | 自動トレーニング。手動でのパラメータ調整は不要 |
過学習のチェック | 損失カーブを手動で分析する必要がある | 自動で処理される |
デプロイ用の変換 | 最適化と変換が必要 | Brain Builderがすぐ使えるモデルを出力 |
必要な総時間 | 専門性に応じて1〜4週間 | 1日以内 |
まとめ
「Brain Builder for AITRIOS」は、AI開発をすべての人にとってシンプルなものにします。専門家にとっては、時間のかかる手作業を排除し、ワークフローを加速。初心者にとっては、AI開発にありがちな高い学習コストを取り除いてくれます。膨大なデータセットの準備、モデルアーキテクチャの選定、トレーニングパラメータの最適化などに何週間も費やす代わりに、AIで現実の課題を解決することに集中できるのです。
Brain Builderのプロセスはとても簡単です:画像をアップロード → ラベル付け → トレーニングの深さを選択 → デプロイ
コーディング不要・複雑な設定も不要です。
最新バージョン「v25.02」の注目ポイント
最新版の「Brain Builder for AITRIOS v25.02」では、多くのユーザーから寄せられていた要望が反映され、より安定した操作性と高速なパフォーマンスが実現されています。
特に注目すべき機能は以下の通りです:
・評価結果のCSVエクスポート機能:Evaluationパネルから簡単に結果をダウンロード可能に。
・データセットのトレーニング・バリデーション分割のエクスポート機能:動的アップロード・静的アップロードの両方に対応し、トレーニングで使用したデータの追跡や再現性が確保されます。
v25.02では、さらに嬉しいアップデートがあります:
・試用ライセンスの延長:
これまでの10日間から30日間へと大幅に延長され、
新たに追加された高精度モデル「Anomaly Hi-Fi」も、従来の分類モデル・検出モデルと合わせて試せるようになりました。
たっぷり時間をかけて、モデルの調整や実ユースケースでの検証が可能です。
・新しいライセンス体系(3段階):
プロジェクトの規模や予算に応じて選べる、Basic/Standard/Proの3つのプランが新たに導入され、より柔軟な利用が可能になりました。
AITRIOSは、インテリジェントビジョンセンサーを搭載したエッジデバイスとAI開発ツールを統合したプラットフォームです。スキルレベルを問わず、あらゆるチームがエッジでのビジョンAIアプリケーションの構築・展開・管理を可能にします。
AITRIOSのAIツールとサービスについて、詳しくはこちらをご覧ください。