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Brain Builder for AITRIOS を使った物体検出タスクの操作ガイド

2025/02/06
Brain Builder for AITRIOS を使った物体検出タスクの操作ガイド

使用している Brain Builder のバージョン:v24.09.7

想定読了時間:9分

Brain Builder for AITRIOS で果物を検出する:りんご・バナナ・オレンジ

AI が果物の仕分け、品質管理、在庫管理を効率化する世界を想像してみてください。 Brain Builder for AITRIOS を使えば、りんご・バナナ・オレンジといった果物をリアルタイムで識別する検出モデルを構築できます。 この技術は農業・物流・小売といった分野に応用でき、果物の検出を自動化することで時間の節約とコスト削減につながります。

本記事では、果物検出AIモデルがどのように機能するのかを紹介し、その活用シーンを考察するとともに、りんご・バナナ・オレンジを例に実際にモデルを構築する手順をご案内します。

検出モデル(Detector Model)とは?

検出モデルは、画像をカテゴリ分けするだけの分類モデルを超えて、画像内の物体を特定し、バウンディングボックスで位置を示すことができます。 果物検出の文脈では、1枚の画像に含まれる複数の果物を認識し、それぞれの位置をマークすることを意味します。

例:

  • 果物の識別:
     画像内のりんご、バナナ、オレンジを検出し、仕分けや在庫管理に活用します。

  • 収穫モニタリング:
     果樹園や農場での果実収量をカウントし、追跡します。

果物検出のユースケース

自動仕分け
検出モデルは、コンベア上を流れる果物を識別し、種類ごとに分類して梱包や加工に利用できます。

小売での活用
スーパーマーケットでの在庫確認を自動化し、陳列されている果物の種類や数量を特定します。

農業モニタリング
ドローンやカメラを使って果物の成長を監視し、収穫可能な熟した果物を検出します。

果物検出における検出モデルの使い方

以下の手順に従って、果物検出モデルを構築・学習させましょう:

新しいプロジェクトを作成する

  • Brain Builder for AITRIOS にログインし、[New Project(新規プロジェクト)]をクリックします。
  • Detector(検出モデル) を選択します。
  • プロジェクト名(例:「Fruit Detector」)を入力し、説明を追加してください。

データセットを準備する

画像を収集する:

収集したデータセットには、りんご・バナナ・オレンジを含む画像を使用します。
また、画像は コンベア上の果物、かごに入った果物、店舗の棚に並ぶ果物など、実際のシーンを反映していることを確認してください

画像にアノテーションを付ける

画像へのアノテーションは Brain Builder 上で行うことも、あらかじめ KITTI 形式でアノテーション済みの画像を利用することもできます。

  • Brain Builder を使って画像にアノテーションを付ける方法:
    各果物の周囲にバウンディングボックスを描き、ユースケースに応じてラベルを付けます。
    今回の例では、以下のラベルを使用します: 「Apple」, 「Banana」, 「Orange」
  • KITTI 形式でアノテーション済みの画像を使用する:
  • ZIP ファイルが正しい形式になっていることを確認し、アップロードしてください。

モデルを学習させる

  • [Training]タブに移動し、学習時間(Duration)の設定を行います:
    • Quick: セットアップを素早くテストする場合

    • Balanced: 過度な時間をかけずに良好な結果を得たい場合

    • Thorough: 時間をかけて最高精度を求める場合

  • 設定が完了したら、モデルの学習を開始します。
    Brain Builder は複数のAIモデルを評価し、データセットに最適なモデルを自動的に選択して最適化します。

結果を評価する

  • 学習が完了したら、評価指標を確認しましょう:
    • Precision(適合率):
       りんご・バナナ・オレンジを誤検出せずに、どれだけ正確に識別できているかを確認します。

    • Recall(再現率):
       画像内の果物を漏れなく検出できているかを確認します。

Precision(適合率)と Recall(再現率)の指標

  • Precision(適合率):
     「検出したすべての物体のうち、正しく検出できたのはどれくらいか?」という問いに答える指標です。

  • Recall(再現率):
     「実際に存在するすべての物体のうち、どれくらい検出できたか?」という問いに答える指標です。

閾値を調整する

結果を評価した後、Brain Builder for AITRIOS では閾値を調整し、その効果をリアルタイムで確認することができます。任意の画像をクリックすると、調整内容がその画像にどのように影響するかを即座に確認できます。なお、これらの調整はAIモデル全体に反映されます。

  • 設定可能なオプション
    • Confidence Threshold(信頼度の閾値)
      • 役割: 検出を有効とみなすための最小信頼度を決定します(範囲:0.1〜1)。

      • 調整方法:

        • 閾値を下げる → 不確実なケースも受け入れる → Recall(再現率)が向上(見逃しが減る)

        • 閾値を上げる → 不確実なケースを排除する → Precision(適合率)が向上(誤検出が減る)

      • デフォルト値: 0.5(ただしデータセットや目的に応じて調整してください)

    • IoU(Intersection over Union)Threshold
      • 役割: AI が生成した検出ボックスと正解(Ground Truth)の重なり具合を測定し、True Positive(正解検出)とみなすかどうかを決定します。

      • 調整方法:

        • 閾値を高くする → より大きな重なりを要求 → 精度を厳密に担保

        • 閾値を低くする → 少ない重なりでも許容 → 検出数は増えるが、精度はやや低下

AIモデルをエクスポートする

すべて問題がなければ、AIモデルをエクスポートできる状態です。Brain Builder for AITRIOS は、プロジェクト名が付いたZIPファイルを生成します。

Raspberry Pi AIカメラへのデプロイ

Brain Builder for AITRIOS を使えば、Raspberry Pi AIカメラへのモデルのデプロイは簡単です。 IMX ビルドツールパッケージを使用することで、Brain Builder からエクスポートしたAIモデルを Raspberry Pi AIカメラで利用可能な形式に変換できます。

1. 必要な依存関係がすべてインストールされていることを確認してください:

sudo apt install imx500-tools
sudo apt install python3-opencv python3-munkres python3-picamera2
git clone https://github.com/SonySemiconductorSolutions/aitrios-rpi-model-zoo.git

2. エクスポートしたAIモデル(Brain)を Raspberry Pi にコピーし、トップレベルのファイルと dataset という名前のファイルを解凍します。

3. 解凍したデータセットのディレクトリでターミナルを開きます。 パスは {Unzipped brainBuilderExport}/{Unzipped dataSetName} です。 そこで以下のコマンドを実行してください。これにより network.rpk ファイルが生成されます。

imx500-package -i packerOut.zip -o .

4. 正しい Model Zoo ディレクトリに移動します:

aitrios-rpi-model-zoo/models/object-detection/brainbuilder/

5. モデルを Raspberry Pi AIカメラにプッシュする

  • 以下のコマンドを実行すると、カメラ映像を表示するウィンドウが開きます:
python app.py --model network.rpk --labels labels.txt --fps 15

6. 実際に動作させてみる

  • Raspberry Pi AIカメラが、学習済みモデルをリアルタイムで実行する様子を確認してみましょう。
    物体検出から分類まで、すべてカメラ上で処理されるため、Raspberry Pi本体のリソースを効率的に活用できます。

成功のためのヒント

  • データのバランス:
    データセットにおいて、りんご・バナナ・オレンジの枚数が偏らないようにし、学習にバイアスがかからないようにしましょう。

  • データ拡張(Augmentation):
    角度や照明条件を変えた画像を追加し、モデルのロバスト性(頑健性)を高めます。

  • 反復(Iterate):
    テスト結果を活用し、ラベル付きデータを追加したり学習設定を調整することで、モデルを継続的に改善しましょう。

さあ、構築を始めましょう!

Brain Builder for AITRIOS を使えば、物体検出AIモデルの作成からデプロイまでを、シンプルかつ効率的に実行できます。

今日から導入を始めて、AIによる品質管理をあなたの生産ラインに取り入れてみましょう!

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