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センシング技術で経営課題を解決。DX・AI活用にAITRIOSを導入すべき理由
DXは今現在多くの企業で取り組まれ、その活用が企業経営の将来に大きく影響を及ぼす時代となりました。しかしながら、経営のDX化が進めば進むほどネットワークに流れるデータ量は雪だるま式に増え続け、皮肉なことにその膨大なデータ量がさまざまな面で〝扱いづらさ〟を引き起こし、経営上のロスやリスクを生み出すようになってしまいました。
そんな中「エッジAIセンシング」を掲げた「AITRIOS(アイトリオス)」がソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社によって生み出され、注目を集めています。この新しいプラットフォーム「AITRIOS(アイトリオス)」とはどのようなものなのかご紹介します。
こんな方におすすめの記事です
- 企業においてDXに取り組む方
- 新時代の企業経営をDXによってサポートしたり提案したりする立場の方
- ソリューション実現の担い⼿となるさまざまなパートナーの皆さま
・AIカメラ上で動作するAIを開発するAIデベロッパー
・AIを活⽤したビジョンアプリケーションを開発するアプリケーションデベロッパー
・AIカメラを開発するカメラメーカーやモジュールインテグレーター
・AIカメラおよびアプリケーションを統合してシステム構築を担うシステムインテグレーター etc
一口にDXといっても、幅広く捉えどころがありませんが、AITRIOSはハードウェアとソフトウェアを両輪とし、クラウドとエッジAIという2つのデータ処理機能を組み合わせて企業の課題に合わせたソリューションを可能にするプラットフォームです。発注者、開発者それぞれの立場で、今後のDX化の検討に新しい視点を持ち込むことができるでしょう。
センシング技術で経営課題を解決するとは?
経営課題は業種により企業によりさまざまで、一つとして同じ形のものはありません。AITRIOSはエッジからクラウドを含めたセンシングソリューションを容易に構築できるワンストップなプラットフォームなので、パートナーはそれぞれのニーズに合わせた高性能なアプリケーションやソリューションの開発・導入を効率的に行うことができます。
センシングデバイスの特性を生かした、小型で使いやすく、かつ低消費電力なシステムやソリューション開発は企業の経営課題にダイレクトに働きかけ、業務の現場を大きく変えていく可能性を秘めています。
「AITRIOS」とは
「AITRIOS(アイトリオス)」は、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社が展開する新たなエッジAIセンシングプラットフォームです。
本プラットフォームのキーワードである“AI”と、AITRIOSを通して社会に提供していく3つのS(Solution、Social Value、Sustainability)を意味する“trio S”を合わせた造語です。
AITRIOSの概要
IoT(Internet of Things)の、社会への浸透によって様々な「モノ」がインターネットと繋がり、社会全体を大きく変えてきました。この流れを今まで中心的に支えてきたのはクラウドシステムです。「モノ」はローカルでシステムを稼働させていたかつての状態から解き放たれ自由度を増し、生活もビジネスもインターネットの力を借りて躍動するようになりました。
しかしクラウド一辺倒ともいえる状態になると、クラウドならではのボトルネックを抱えるようになり、それを解消する新たな技術が近年注目されるようになりました。それがエッジAIです。
AITRIOSはエッジとクラウドが共働した最適なシステムの開発を可能とするプラットフォームです。最先端のエッジAI技術を最大限に活用しながらクラウドの有利な面だけを引き出し、経営課題解決への大きなアドバンテージを提供するものです。
ATRIOS導入のメリット
1. 導入が容易で低コスト
他社エッジAIサービスで必要なエッジコンピュータが不要なため、ハードウェア構成を最小化し、導入・メンテナンス費用を低減します。
2. 専門的なAI知識が無くても運用可能
エッジで使える小型のAIモデルを簡単に開発できる仕組みや、AIモデルの精度を設置場所にあわせて改善できる再学習サービスを提供します。
3. プライバシーへの配慮
画像をクラウドに送ることなく、カメラのイメージセンサー内でメタデータ化するため、プライバシーへ配慮した運用が可能です。
AI活用・DX化にAITRIOSを導入すべき理由
クラウドに頼りきりのシステムでは「膨大なデータ量」「プライバシーリスク」「通信・処理・分析のレイテンシー」「電力消費」「サービスの維持」「セキュリティの保持」といった6つの壁が発生します。AITRIOSでは、エッジ側にもデータ処理の役割をもたせ、エッジとクラウドの最適なコンビネーションでこの壁の解消を実現します。
1. データ量の抑制
クラウドに頼りきりのシステムでは、エッジ側(端末機器)から膨大なデータが転送されます。一方それらのデータを、仕分けられていないまま受け取るデータセンターではその処理に多大な負荷を引き受けることになります。
大量のデータはそれだけで〝扱いづらい〟ものであり、送信自体にも受け側でも大きな負荷がかかることから、まずエッジ側でAIによるデータ処理をしてしまい、必要なデータのみクラウド側へ送信することで、システム全体の負荷を画期的に低減することができるのです。
2. プライバシーリスクの解消
エッジ側で収取されるデータにはさまざまなものがありますが、現場をコントロールすることにIoTが使われる場合に、とりわけ重要視されるのが映像データです。しかし映像データには人の顔や個人を特定できるラベル情報など、「個人情報」にあたるデータが含まれやすく、これはクラウドシステムの決定的なボトルネックになっています。
こうした場合、エッジAIにデータ処理をまかせることでプライバシーに関わる情報を転送する必要がなくなり、プライバシー面での大幅なリスクヘッジに繋がります。
3. 消費電力の削減
IoTが発達した現代社会では、システム利用に伴いIoTデバイスからの膨大なデータ転送にかかる消費電力の増加が、社会的な問題となりつつあります。もちろんそれは個々の企業のコスト増というリスクにもなっており、速やかに解消しなければならない課題の一つです。
4. レイテンシーの改善
IoTによって現場を大きく改変することでDXを進める場合、刻々と変化する現場のスピードに合わせた処理がどうしても必要条件になります。従来のようにクラウドに頼ったシステムフローでは「転送時間」+「データセンターで膨大なデータを処理する時間」がレイテンシー (遅延時間)となり、対応レスポンスにブレーキをかけてしまいます。
エッジ側でデータ処理をしてその場での判断に繋げるエッジAIを積極的活用するAITRIOSは、現場を改変してDXを狙い通り進めるための力強いパートナーとなるでしょう。
5. サービスの維持
クラウドシステムの場合、当たり前ですがデータ転送は既存の通信インフラに依存します。通信インフラは絶対ではないのでダウンする可能性がゼロではなく、それはそのまま事業のリスクになっています。エッジ側にも役割を持たせるAITRIOSプラットフォームでは、クラウドが切断されてもエッジ側で処理を続けるのでサービスを継続的に提供することが可能です。
6. セキュリティの保持
データは、介在する媒体が多いほど漏洩リスクが高まります。エッジ側でデータや画像を解析し、必要な情報のみを抽出してクラウド側に送るのが、エッジAIを活用するAITRIOSプラットフォームです。これによりセキュリティ度の高いデータにも配慮したシステム構築が可能になります。
企業のAI活用・DX化を支援する方にもおすすめです
AITRIOSは、企業のAI活用・DX化を支援するコンサルやデベロッパーに採用してもらうことで間接的に企業経営に役立つことも前提に開発されています。そのために次のような視点が確保されています。
1. 開発環境の提供
開発環境は、AIデベロッパーやアプリケーションデベロッパー、またカメラメーカーやモジュールインテグレーターといったパートナーが、効率的な開発を実現するためのSDKやツールとなります。
開発環境の提供を通じて、ソリューションの担い⼿となるパートナーの開発を⽀援します。
2. マーケットプレイス機能
マーケットプレイスは、デベロッパーが開発したAIやアプリケーションを登録し、パートナーやユーザーがそれらをダウンロードして使⽤することができる機能です。数多くのAIやアプリケーションが揃ってくることで、さまざまなニーズに合わせたソリューションが展開できるようになると考えており、今後この市場が盛り上がっていくことで、さらに多くのパートナーやユーザーの参画を呼び込む好循環を⽣み出すことができると期待しています。
3. ソリューションを効率的に導入すための各種クラウドサービス
最終的なシステム構築を担うシステムインテグレーターを中⼼したパートナーに対して、ソリューションを効率的に導⼊するための各種クラウドサービスも提供します。例えば、マーケットプレイスからダウンロードしたアプリケーションを「IMX500」に実装するデプロイメント機能や、使⽤環境や条件の変化に応じてAIモデルの再学習を⾏うリトレーニング機能、AIカメラを管理するデバイスマネジメント機能、また AITRIOSが提供するAPIを経由し、外部のクラウドサービス上のアプリケーションと簡単に接続することができる機能などを準備しています。
エッジAI向けの最適なセンサー設定により、アプリケーションやソフトウェアの開発からシステムへの実装までを
容易にするためのワンストッププラットフォームを提供します。
AITRIOSの活用事例
ヴィレッジバンガード様のサイネージ視聴者分析
実際に動画を見たかどうかの視認検知までを検証する事が可能で、データの信ぴょう性が高まり、コンテンツごとの視聴率など、さまざまな分析が可能になったことでサイネージの可能性が大きく高まりました。
ローソン様の店舗DXに向けたエッジAI活用
コンビニエンスストア「ローソン」の東京都・神奈川県内の7店舗を対象に、店舗DXに向けたエッジAI活用による実証実験を行いました。実験では、店舗内にAI処理可能なエッジデバイスを数十台設置し、商品棚の状況を可視化したほか、店内に設置したカメラシステムを通じ、顧客の店内動線や滞留時間などの行動データをAI技術により解析しました。得られたデータは、店舗施策の改善に活用するためのプロセス構築に活用されています。
物流倉庫の荷物積み降ろし場での作業効率向上、ドライバーの作業負荷低減に貢献した事例
三井倉庫サプライチェーンソリューション株式会社様においてエッジAI技術の活用により、物流倉庫の荷物積み降ろし場(バース)における作業効率向上を実現するサービスを開発し、11月より提供開始しました。
本サービスは当社と株式会社Hacobu、株式会社レスターエレクトロニクスの3社コラボレーションによって提供したもので、運送トラックによる荷物積み降ろし場の利用実績の取得や作業時間の計測を自動化することにより、ドライバーの不要な待ち時間および倉庫内従業員の作業時間の短縮に寄与しています。
まとめ
企業の経営課題の中で、DXが特に期待をよせられているのは経営の土台を形成している分野です。具体的には人手不足やコスト削減などといった課題解決に着実な実績をのこしつつあり、この傾向は今後さらに広まるでしょう。
一方で、DXの取り組みが掛け声だおれになってしまった、という事例も少なからず見受けられます。DXで出来ることを並べ立ててそこに現場を合わせていくのではなく、ビジネスの現場をまずしっかり捉え、現場の課題解決にDXをどうやって活用させていくかを考えるスタンスが必要と思われます。
AITRIOSの中核をなすエッジAIは、現場で起こっていることをデータ化し、即座に業務にフィードバックする点で優れています。今までどうしても解決できなかった非効率な部分も、そこを少しずつ改善するのではなく、新しい仕組みでガラリと改変してしまうポテンシャルを持ったシステムと言ってよいでしょう。多くの企業の現場の課題解決に活用されることを期待したいところです。