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顧客プライバシーにも配慮。エッジAIによる最新のデジタルサイネージ広告効果測定手法とは?
いわゆるデジタルサイネージは、屋外広告(公共空間や交通車両、店舗内を含む)の中で比較的新しい媒体とはいえ、すでに数十年の歴史を有しています。誕生してから現在までの間、ハード面の進化こそありますが「情報の可変可能な電子看板」という位置付けは変わっていません。そんなデジタルサイネージにエッジAIの技術を融合させると、従来の媒体特性を大きく変える新しい可能性が見えてきます。
こんな方におすすめの記事です
- 広告を出稿・依頼する立場の方、広告主として効率の良い広告を模索している方
- 自社のデジタルサイネージを最大限活用したい方
- ネット以外の、リアルな場で告知できるメディアを探している方
広告は、それを出稿する側も、依頼される側も、常に「効果」との因果関係を気にせざるを得ず、その評価にさらされます。しかし、効果のある広告を出したい、どのような効果があったか知りたい、といった要望に多くの広告媒体ははっきりとした答えを返せないのが実情です。
エッジAIを搭載したデジタルサイネージ広告は、このような課題に対し新たな可能性を提示できる媒体です。さまざまな場所での活用が検討されてよいでしょう。
デジタルサイネージ広告の課題
デジタルサイネージ広告は、公共空間や店舗における情報発信源として期待されてきました。人が行き交う空間の広告でありながら、情報媒体として使うことができるからです。映像表現が可能で目立つ上に、ネットワークに繋げると情報の書き換えが簡単な点もメリットとして認識されました。しかし、今までは次に示す従来型のサイネージ広告としての弱点を消し去ることは難しく、そこが課題でした。
対象者を定められない
屋外にしろ、公共空間にしろ、店舗内にしろさまざまな人々がランダムに行き交い、広告活動でターゲットを絞るということがほとんどの場合できません。あるいはどんな人に見てもらっているのかがわかりません。ターゲットの絞り込みが難しいのはマス媒体でも同様ですが、時間帯や媒体特性を絞ることである程度こじつけることはできます。サイネージ広告はそれすらほぼ不可能なのです。
効果がわからない
サイネージ広告は、その前を通過する人を数えることは出来るので(入店調査・通行量調査)、接触可能な人が1日何人などと、割り出すことができます。しかし、それはリーチ(届いた)とは明らかに違います。効果があった、なかったは極めて感覚的に評価にしかすぎないことを前提に、検討していくしかない媒体なのです。
デジタルサイネージ広告は、エッジAIカメラを組み合わせると媒体特性が変わり可能性が広がる
デジタルサイネージに、エッジAIを連動させると媒体特性がガラリと変わり、広告媒体としての可能性は一気に広がります。両者の相性は非常に良いので、デジタルサイネージを媒体として採用するならエッジAIを組み合わせることが必要条件となっていくでしょう。
エッジAIカメラの威力はなんといっても目の前の人や事象を認識できる点にあります。しかもプライバシーに抵触する危険はまったくありません。
デジタルサイネージ機能にエッジAIカメラを加えると、次のようなことが可能になります。
対象者がわかる
デジタルサイネージの前をたくさんの、そしてさまざまな人が通ります。男性なのか女性なのか、年齢は?ファッションから職業や趣味趣向だって分類することができるかもしれません。それらの属性を時間帯ごとにカウントし、分析することもできるのです。ただし、後述するように構造上プライバシーデータが漏れることはありません。
効果がわかる
対象者はデジタルサイネージの前でどうしたでしょうか。視線も向けずに通り過ぎたでしょうか。視線は向けてくれたのでしょうか、それは何秒?立ち止まったでしょうか、立ち止まって注視してくれたのでしょうか。広告主の意図や、広告のコンセプトによって評価基準を定め測定することができます。それは効果の測定にほかなりません。
情報を届けたい対象者に向けて届ける
日によって、曜日によって、時間帯によってデジタルサイネージの前を通過する人々の属性は刻々と変化します。その変化する対象者にふさわしい情報を発信することができます。
取得したデータをもとに、曜日や時間帯によってあらかじめ発信情報をプログラムすることが可能です。さらには、行き交う対象者の属性に合わせた情報をリアルタイムで変更しながら発信するプログラムを組むことも可能です。
戦略的な広告運用
デジタルサイネージを運用しながら蓄積されていくデータは、マーケティングデータそのものです。どのような情報が、どのようなペルソナに受け入れられたか、実施の反応を捉えることができます。その反応データを蓄積し、その後の広告運用や広告デザイン制作などにフィードバックし向上させていくことも可能でしょう。
プライバシーデータは守られる
エッジAIカメラは捉えた映像データをクラウドに転送することはせず、その場で数値データなどに置き換えてしまいます。構造上、映像データを残すことはしないためデータの転送や蓄積段階での漏洩はありえません。デジタルサイネージとエッジAIカメラの相性の良さは、この点にもあります。
そもそも、エッジAIとは?
1. エッジAIの基礎知識と特徴
エッジAIとは、エッジデバイス(端末)にAIを搭載したテクノロジーを指します。エッジAIを搭載する端末は、自動車や産業用ロボットから家電製品や小型のカメラのようなものまで多岐に渡ります。端末に直接AIを搭載するので、即応性やセキュリティを高めることが可能です。
2. クラウドAIとの違い
クラウドAIの場合、必要なデータはデバイスからデータセンターへ転送され、そこで蓄積・計算処理されます。その転送時やクラウド上でセキュリティ度の高いデータは漏洩のリスクが常に付きまといますが、エッジAIの場合は端末側でデータ処理してしまうためその心配がありません。
例えば人物が直接映り込む映像データを取り扱う場合にはプライバシー情報の厳格な扱いが絶対条件となります。エッジAIデバイスでは、対象者の属性や行動を認識した段階で個人を特定できる要素は消去してしまうのでクラウドAIにくらべプライバシー保護のレベルにおいて絶対的な優位性があります。
3. エッジAIのメリットと今後の可能性
エッジAIは、端末にAIを搭載して瞬間的にデータを処理して結果を出せるため、細かい状況に即した判断を下すことも可能です。プログラミングしきれないほど多様なパターンが実現でき、より多くの場面でAIの技術を有効活用できるようになります。
とりわけ流通の現場で起きている事象は、類型化することが難しく端末側でのAIによる瞬時の判断が大きなアドバンテージとなります。
エッジAIのメリットは、データ処理のレスポンスの良さの他に、通信したりクラウド上に蓄積する事がリスクとなるセキュリティ度の高いデータであっても安心して扱えることにあります。データセンターへのデータ転送量が少ないので、通信費用が低コストで済む点も特徴と言えるでしょう。
デジタルサイネージ広告の広がり
屋外や公共空間で展開するサイン類は「いかに目立つか」がどうしも求められます。21世紀になって、表示デバイスの進化によってデジタルサイネージは公共空間で「目をひく」新しい媒体としてデビューしました。しかしまだこの段階では目立つことを身上とした従来のサイン類の域を超えるものではありません。
ネット社会になり、デジタルサイネージがインターネットと繋げられるようになると、情報をいつでも任意に変更しながら運用することが可能になりました。しかしながらこの段階でもなお、インターネットは単なる通信インフラとしての役割しか果たせていませんでした。情報の流れは、相手構わず発信する単純な一方通行です。
エッジAIカメラとの組み合わせによる将来性
デジタルサイネージにエッジAIが組み込まれると、見た目は今まで通りですが前述のように相手を識別しながら情報を渡していく、機動力のある情報発信ができるようになりました。この「対象者を識別できる」という点が、一見一方通行に見える情報伝達に大きな意味をもたせています。
工夫次第でさまざまに活用でき、可能性が一気に広がることになったのです。さらに、効果を測れるということは、ステップバイステップで成果を更に良いものにしていける、ということでもあるのです。
エッジAIカメラを活用した最新のサイネージ効果測定事例
ヴィレッジバンガード様のサイネージ視聴者分析
実際に動画を見たかどうかの視認検知までを検証する事が可能で、データの信ぴょう性が高まり、コンテンツごとの視聴率など、さまざまな分析が可能になったことでサイネージの可能性が大きく高まりました。
デジタルサイネージ広告の効果測定はソニーのエッジAIセンシングサービス「ATRIOS」をご利用ください
ATRIOSとは
「AITRIOS(アイトリオス)」は、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社が展開する新たなエッジAIセンシングプラットフォームです。
本プラットフォームのキーワードである“AI”と、AITRIOSを通して社会に提供していく3つのS(Solution、Social Value、Sustainability)を意味する“trio S”を合わせた造語です。
1. 世界初*AI処理機能を搭載したソニー製インテリジェントビジョンセンサー「IMX500」
インテリジェントビジョンセンサー「IMX500」は、イメージセンサーにAI処理を内蔵した世界初のインテリジェントビジョンセンサーで、高性能なプロセッサや外部メモリーを必要とすることなく、エッジAIシステムを実現することが可能です。
通常のイメージセンサーで動画を撮影する場合データの送信が多くなり、リアルタイム性を確保することが困難でした。「IMX500」は、ISP処理および高速なAI処理を行うことにより、動画の1フレーム内で全ての処理が完結します。これにより、動画を撮影しながらの対象物の高精度なリアルタイムトラッキングが可能となります。
また、ユーザーは、任意のAIモデルをメモリーに書き込み、使用環境や条件に合わせて書き換え、アップデートすることが可能です。例えば、本製品を採用した複数台のカメラを店舗に設置した場合、1種類のカメラで、設置位置、状況、時間など目的や用途に応じて使い分けることができます。入り口であれば入店者のカウント、棚であれば商品の欠品検知、天井であれば来店者のヒートマップ(人が多く集まる場所の検知)などの複数の用途に活用できます。また、これまでヒートマップの検出に使用していたAIモデルを、消費者行動を把握するために使用するAIモデルなどに書き換えることも可能です。
2. AI開発、展開、管理するツールを提供するプラットフォーム「ATRIOS」
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社が展開する新しいプラットフォームが「AITRIOS™(アイトリオス)」です。
AITRIOSは、クラウドが持つボトルネック(膨大なデータ量、プライバシーリスク、通信・処理・分析のレイテンシー、電力消費、サービスの維持、セキュリティの保持)を解消するために生み出された新たなエッジAIセンシングプラットフォームです。
このプラットフォームを通じてエッジとクラウドが共働した最適なシステムの開発が可能となり、さまざまな産業に対する新たな価値提供や課題解決に貢献することをめざします。
まとめ
「費用対効果」は広告に関わる全ての人にとって重要な課題です。しかしながら多くの広告媒体で効果測定が難しく、継続的な広告活動で成果につなげるのを困難にしています。
エッジAIを活用したデジタルサイネージ広告は、プライバシーに配慮しながらもどんなタイミングでどんな広告を打ち出せば、対象者がどんな反応をしたか、という関係性を把握しやすく、そこをコントロールできるがゆえに費用対効果を捉えやすいのです。
実績例はまだ少ない分野ではありますが、さまざまな試行錯誤を繰り返すことで新しいメディアとして確立されていくものと思われます。